はなうた対話集5:鈴木雄大× 森幸司× maru

【日時】
3/19(木)open:18:30 / start :19:00 ~21:00頃まで
【場所】
川反中央ビル3階”studio”(秋田市大町3丁目1-12)
【内容】
視聴覚室主催・鈴木雄大の1st album「at “studio”」リリースを記念して、カセットテープレーベル「ZOMBIE FOREVER 」の森さん、レコードカッティング「OVO」のmaruさんと共に、音を記録することについて様々な切り口からお話を伺いました。

※視聴覚室:気になる音楽にスポットを当ててゲストと共に掘り下げていくトーク企画。
(各回のテーマ)
Vol.1     「コンピューターミュージック」
Vol.2 「アンビエント」
Vol.3 「インプロヴィゼーション」
Vol.4 「架空の島の音楽」

【登壇者】
鈴木雄大(トランペット奏者 / hanauta)
森幸司(ZOMBIE FOREVER / のら珈琲
maru(OVO )

 


―リリース記念なのに演奏しない

 

 

雄大 川反中央ビル”studio”にお越しいただきありがとうございます。

この企画は、気になる音楽のある部分にスポットを当ててゲストを呼んで話を聞く、そして僕が勉強できて嬉しいという内容で続けてきました。今回のテーマは「音の記録をする」。この度、自分の名義としては初めてCDを発売したんですけど、そのリリース記念も兼ねております、リリース記念なのに演奏しないっていう、、笑。なんでそうしたかっていうと、このCDの成り立ちが、「ここ”studio”の空間を記録しておきたいな」ということから始まって、演奏することよりも記録するということに僕が関心を寄せているということでこのようなかたちになっております。では、ゲストを紹介したいと思います。まずは森さんです!(拍手)

 

 秋田の旭南で「のら珈琲」という喫茶店をやっております、森幸司と申します。山形出身なんですけど、もともと東京の方に12年ぐらいいて、HMVを経て介護とか仕事をしながら2007年から「ZOMBIE FOREVER」というカセットを専門に出しているレーベルをやっています。あとは「COFFEE AND CASSETTES」という珈琲豆とカセットテープを組み合わせたコラボレーション企画などもやっています。

 

雄大 そしてmaruちゃんです!(拍手)

 

maru こんばんは。「OVO」という名前で、レコードをその場でダイレクトでカットすることを去年のレコードの日(11月3日)からやっています。

 

雄大 今回僕が記録した媒体というのはCDになりますが、森さんはカセット、maruちゃんはレコード、それぞれ違う媒体に記録することをやっている3人で、音だったり何かしらを記録・保存するということがどういうことなのか掘り下げていきたいなと思います。

まず、3人1回マスクとって記念撮影しましょうか、せーの!

雄大 今日の構成としては、僕の作品の紹介をさせてもらった後に、お2人の話、そして最後に簡単なワークショップに参加してもらえたらと思っております。

 

―楽器の音というより、ここの空気感をとりたかった

 

雄大 このCDを作ったきっかけは、ちょうどこのビルがある種の節目の時期だったからなんですよね、入ってるお店もだいぶ変わってくる1年で。この”studio”ではよく演奏会もしてきたんですけども、その時の雰囲気って、そこにいる人達・お店・季節とかが組み合わさってできてるその時だけの空気感だよなあと思って、音楽もその一部だと思っているので、これは録っておきたいなと思ったことにあります。

(秋田市の川反地区の入り口にある「川反中央ビル」 photo by ココラボラトリー)

※現在、1階にギャラリー「ココラボラトリー」、2階に「Cafe Epice」「Flower space  T’s」、3階にTシャツショップ「6 JUMBOPINS」アクセサリー&クラフト「and toiro(h.u.g.)」、そして音楽にまつわるアートスペース「“studio”」がある。

 

雄大 実のところ、僕は自分の演奏を録音することがあまり好きではないし、人前で演奏することよりも音楽について考えてたり黙々と吹いてたりすることの方が好きだったりするんですが、初めて純粋に記録したいなと思いましたね。川反中央ビル、そして”studio”まわりの音の記録というものを1年かけて朝昼晩と時間もそれぞれで作りました。楽器の音というよりここの空気感をとりたかったので、今日もあそこにマイク立ててみたんですが、同じようにしました。

(レコーディング風景 photo by tkc)

 

雄大 マイクの位置は普段の僕の立ち位置なんです。

“studio”での演奏会中は僕はスタッフとしてそこの客席の後ろから覗いてるんですけど、自分の耳に見立ててマイクを2本、聴いてる音をそのまま録る感じです。で、マイクが楽器から離れてますよね、そうすると隣の京野さん(隣のお店「6jumbopins」店主)のTシャツ刷る音だったり、信号機のピヨピヨピヨって音とかが入って、そのままパッケージした感じの音像・音の感触になってます。イヤホンで聴くと耳のあたりに空間が集中しちゃうかなと思うので、できれば皆さんのおうちだったり車だったり自分の生活のスペースに”studio”の空気を広げてもらえると嬉しいなという風に思います。僕自身が”studio”での演奏会を聴いて「ああ、いいな」と思っている空気を皆さんにお届けしているようなコンセプトです。

雄大 そして、このジャケット!すごいですね。僕は「hanauta」として、妻でフルート奏者のいしまさんと活動しているんですけど、これはいしまさんのディレクションです。”studio”は窓が印象的な空間で、この窓を盤面にそのままプリントしました。そしてこちらにも窓、さらに「まど枠」という一緒に音楽企画をやってきたお店がここの向かいにありました。ロゴの制作は「まど枠」のmikiko itoさん。窓枠というのもこの場所のキーワードになっているので、窓の枠からのぞくような。このジャケットがそのままビル、ということも言えるかもしれませんが、それを届けるという意味でお手紙風な感じにもなっております。スタンプは当時このビルでお店をやっていたmariko matsuhasiさんにロゴと僕の名前で作ってもらいました。1個1個僕が押してます。枠を切るのはいしまさんです。何百枚も切ることになりますね、、苦笑。帯は那波紙店さんで選んだ和紙です。こういった形に仕上がりました。

で、「CDができました」から先っていうのは実は僕らは今までやってきた活動の1つで、この部屋を見渡していただくと色んなCDが置いてあるんですが、ゆかりがあるミュージシャンのCDをここでは販売していて、出来上がったものをお客さんに届けるということは今までの活動でしてきたわけです。なので、「記録してかたちにする」っていうことが今回初体験。盤面刷ること以外はだいたい自分たちでやりました。その作業は大変だったけどすごく面白くて、この面白さって何なんだろうなと。

「記録」ってアウトプットに見えるけど、例えば「俺の音を込めるぜ!」って演奏するパターンもあると思うんですが、自分の好きなものをかたちにおさめる・手に取れるものにすることって、インプット的な要素があるかなと感じて腑に落ちたところがあります。

好きなものをかたちにして反芻するように聴いてみる・手で触ってみる。記録したものを何かを媒介させてまた自分に戻していくような感覚。面白さってそこなのかなってこのところ感じております。

 

maru 実際アルバムができてどんな気持ちでしたか?何かと似てるような感じとか。

 

雄大 うーん、あえて言うのであれば、それこそ写真アルバムに近いのかな。写真を撮って、自分が撮られて、例えばそれを自分で見ては「この僕の顔、悪くないな」とか、笑。

 

maru あまりライブに行かない人とかにもこういう音楽が届けばいいなという気持ちはやっぱりありますか?

 

雄大 実はあまり考えてないんですよね、、気持ちの出発点としては、これっぽっちも無い。。今日は正直に言おうと思うんですけども。できたものをじゃあどこに届けるといいのかなっていうのは頭を切り替えて次の行程として今も考えつつやってます。

 

森 媒体としてCDを選んだ理由は何ですか。

 

雄大 録音の方法がまず決まって、自分の普段の立ち位置に耳の位置にマイクを立てて、そこでの感覚を保存したかったので、近いかたちで残せるのはCDなのかなと思ったのが1番ですね。カセットとも迷いました、やわらかい音が好きなので。でも良い音・悪い音・色んな音をキャッチしてくれるのは容量的なところでもCD・データなのかなと。あとは、”studio”ではCDというモノを扱うことをhanautaの活動としてやってきたこともあり。

 

maru レコーディングで大変だったことはありますか?

 

雄大 すごくシンプルな録り方をしているので、音量を演奏者側でコントロールしなきゃいけないんですよね。一般的な方法だとそれぞれ楽器のところにマイクを立てて録って、最後に音量調節をエンジニアさんがやるっていう過程があるんですが、今回は演奏する立ち位置をかえてみたりとか、小さい音で演奏したりとかバランスをとるのが難しかったりしましたが、あまりストレスは無くできました。

 

 もともとこのような録音をしたかった?

 

雄大 いやー、だからコンセプトとしてはそうなんですけど。。この方法の欠点は失敗しても録り直せないというか、すごく良い演奏だったけどあそこでトランペットが音間違えてるんだよなあとかあっても基本修正できないので、そういう意味では本当はやりたくなかった。。でもコンセプトが先行しているので、頑張って演奏するかと思ってやりました。今後僕が一発録りをすることは無いと思います!

 

 断言した、笑。

 

maru ジャケット作成も大変なことがあったって聞いたんですけど。

 

雄大 そうなんです、我々は作家さん・美術家の方とかの友達が多いので、「きっと作家さんてこういう気持ちでやってるんだね」とか言いながら作ってて、ちょっと仲間入りしたような気持ちで楽しかったんですが、試行錯誤しながら進めていったので、盤面のプリントを業者さんから1度サンプルで送ってもらった時に「よし、これでいこう!」って決めたのに、実際に来たものがちょっとズレてるとかいうのがあって返品したりして、こういう大変さはあるよなあと。身をもって学んだなと思います。

 

 雄大さんはズレたりして来たときは怒るんですか?

 

雄大 あ、いや、困ったなあ、ぐらいですね。

 

(一同笑)

 

 じゃあそこはいしまさんが?

 

雄大 はい、僕の分まで。笑

 

―カセットにすると自分の手元にあるのですごく安心するんです

 

雄大 森さんはカセットですね。今日はおすすめのプレイヤーと色んなタイプのカセットを持ってきてもらいました。

 

森 僕がやってる「ZOMBI FOREVER」というレーベルはもともと山形と東京でずっとやっていたので、アーティストは全国各地いるんですけど、秋田に来たので秋田のアーティストを積極的にリリースしたいなってことで、最初に秋田で一緒にやったのがmaruさんがやってる「Woodblue」のカセットテープをつくらせていただきました。(カセットを再生)

 

雄大 これは何という曲ですか?(ニヤリ)

 

maru あっ、これは「gray city」ってタイトルで、秋田はgrayな空が多いんで、ネガティヴな意味とかではなくて、普通にもう慣れすぎてて、どこか他の所から帰ってくると落ち着くからそういう色をアルバムのタイトルにしたって感じで、、、ちょっと、いきなり振りましたね!

 

 台本読んでちゃだめですよ!

 

雄大 うわ、資料の量すごいですね!何ですかソレ!(一同笑)

というわけで実はmaruちゃんは「OVO」としてレコードカッティングの活動を、そして僕のアルバムの3曲目と6曲目の「Woodblue」というのもmaruちゃんです。6曲目はこのカセットに入っている曲をアレンジして作りました。そんな共通点がこの3人にはあります。

 

 僕がなんでカセットにこだわってやってるかっていうとほぼ、好きということしかないんです。僕は多分一番最後のカセット世代と言われている年代なんです、今36歳なんですけど。

もともと親がラジカセを持ってたのを遊び道具みたいに使ってて、ミックステープとか、テレビの音とかを録ってて台所の音とかお母さんの音とか入っちゃったりとか、そういう遊びをずっと小学生からやっていて、二十歳ぐらいで東京に行く時も持って行ってずっとまたミックステープを作り続けてたんですよ。レコードも白と赤のアウトをラジカセに入れてCDもレコードも全部カセットに集結して曲を作っていくのがミックステープなんですけど、これまで百本ぐらい作ってます。その作業が好きだったり、自分の中の特別感があります。CDとかレコードも大好きなんですけど最終地点がカセットテープなんです。

レコードにしてもCDにしてもモノって無くなっちゃったりするけど、借りパクとか。カセットにすると自分の手元にあるのですごく安心するんですよね。「この曲は俺は持ってる」みたいな。お金がなかったりするとテレビでMステとか、昔ルナシーとか録ってましたけど、良い曲が来るとダッて録音して、まるまる入ったりするとガッツポーズとかして笑、その日にちを書いて「この曲は俺は持ってる」って。昔のミックステープを聞くとタモリの声が入ってたり、ラジオDJの声が入ってたりっていうのがほとんどなんです。そういう思い出込みです。お金が無くても庶民が一番楽しめるメディアだと思ってて。

カセットって意外とぞんざいに扱っていいっていうか、ボンボン投げてもいいっていうか、震災があった時もなぜかカセットは聴けたみたいな例もいっぱいあって、その時も嬉しかったんですけど、一番身近なものだと思っていて、作るのもそんなに費用がかからないんですね。

CDもずっとレーベルでプレスしてきたんです。10作ぐらい。タワレコとかHMVに流通するようなものを作ってきて、どんどん売り上げが落ち込んできて、なかなか取り扱ってもらえなくなってきて、いよいよ部屋がCDまみれに。在庫でいっぱいになっていよいよやばいぞと。

僕の近くにはいつもラジカセがあったので、これで良いんじゃないかと思ったんですね、その時。一本一本録音するのは大変だけど、これで販売したらいいんじゃないかって行きついたんです。

なんでこんなに在庫を持つ必要があるのかと。CDを作ると僕の時代は1タイトル、20万とか30万とかかかったんです。だからマイナスからの発信だったんですよ。なんでそんなにつぎ込んで好きな音楽をだして悩んで、売れない!とか言わなきゃいけないんだろうってなって、それはみんな幸せなのかなって感じがどんどんしてきて。1本1本作ってなくなったら作ってというのを繰り返すことはできないかなというのでカセットになって。1番最初に出したのが「Hi,how are you?」っていう2人組なんですけども、それが今で500本ぐらい売れてるんですけど、結局CDより売れちゃったんですね。まあ、そんなことはなかなか無いんですけど、その時に自分がやってることは間違いじゃなかったなっていうか、皆がプラスになっていく方法っていうか。

 

雄大 カセットというのはやっぱりハードルが低くて、コンパクトさっていうのもあるし、このデバイスの中では録音しやすい。歴史的にも大多数の人が手軽に録音できるようになったってことはありますよね。

 

 SACD(スーパーオーディオCD)を作るのに関わっている人がうちのお店に来たことがあって「カセットに一番の功績は宗教を広めたことだ」って言ってましたね。今やカセットって全世界の規格だから、宗教を広めるには一番有効だったみたいですね。どこ行っても聴けるから。

 

雄大 プレイヤーもこのサイズでいいですもんね。聴きやすさ・録りやすさ・手軽さという視点では、それを追うようにというわけじゃないんですけど、今はCDも我々が自主制作ができるくらい誰でも録れる、カセットに近づいてきたという風にも思います。エジソンからの時代の流れで、レコード会社くらいしか録音というものができなかったのが、誰もが自宅で音楽を聴ける時代を経て、カセットが出てきたことで一個人が録音できるようになって、今は僕らのようにCDが作れる。誰もが録音をできるようになってきたという流れを歴史を辿ると感じます。さて、じゃあこちらのカセットの紹介を。

(紹介してもらったカセットの一部、のら珈琲の棚より)

 

 これはノーマルですね、普通に売ってます。これがハイポジ。

 

雄大 さっき「ハイポジ」って何ですか?って聞いたら、えーっ!?雄大くんそんなことも知らないのって笑

 

一同 えーっ!?

 まあ、高音質で録れるっていう。うちの店だと、「奥さん、ハイポジ入ってますよ」っていう感じの口説き方をする。笑。

 

雄大 え、どういうことですか?

 

 ちょっと高級志向な野菜みたいな。笑

 

雄大 デバイスギャグ。笑

 

 これはメタルテープ。これは本当に好きな人しかわかんないかも。珍しくて、外側もメタル。プラスチックのメタルテープっていうのが本来なんですけど。

これはエンドレステープ。中が繋がっててずーっと音楽が流れます。これは友達の宮内優里くんっていうアーティストがのら珈琲用に作ってくれたエンドレステープです。

 

雄大 この発想は無かった、テープって止まるものだと思ってったから。

 

 店が混んだ時はこれを流します、B面にひっくり返さなくていい、笑。

これはクリーニングテープ。あと面白いのがノベルティテープ。

 

雄大 アリナミンVって書いてありますね、これは集めるのが楽しそう。

 

 あとはカセットはDIYというか、自由に作れるので、これは映画のサウンドトラックなんですけどカセットになってなかったので僕が作りました。自分にしかできないこと。A4の紙を85%ぐらいの規格にするとピッタリはまります。切って作ったり、すごく楽しいので、どうですか?ワークショップ。

 

雄大 いいですね、それやりましょう!

 

 あと特殊パッケージ。

 

雄大 あ~CDもこの数年、装丁と言いますか、いろいろなかたちが出てきて面白い。音楽はデータで売り買いされるようになってきて、実物の必要性に今迫られてると思うんですけど、おうちに飾れるようなものだったり、見てて面白いようなものが増えてきてます、カセットも同じようですね。

 

 はい。あとミックステープを作る時は、CDと違って60分テープとか30分テープとか分数が決まっているので、「あと4分残ってるから!」ってぴったりはまる曲を探すわけですよね、どうにかして。

 

雄大 制限があると燃えますよね、笑。

 

 サビのとこで終わったら最悪じゃないですか、笑。だから、「1分足りなかったからこの曲を選んだ」とか。それも楽しい。

 

雄大 みんなでカセットを作ろうのワークショップはすごく面白そうですね。

 

 テープの音質は、やっぱり周波数というか、音域が狭いので、CDとかには勝てないですよね。勝てないけどもデッキによって鳴り方が違うので、ラジカセありきだったり。

 

雄大 そうですよね、ラジカセだけでも色んな話が聞けると思うんですが、今日は割愛させていただきます、また今度!

 

―音声を物質にしたい

 

(OVOのレコードカッティングの様子)

雄大 いい映像ですね、鈴木家です!

 

maru この機械を使って、直接マイクで鈴木家の演奏を録りながらそのままレコードを回して盤に削って彫っていく映像ですね。映像はこちらの素敵なお姉さんが撮ってくれたんですけど。

 

雄大 アルバムのトレイラーも Tei Kaya(小宇宙感光)さんに編集していただいて素敵な映像に仕上がっております。

 

 これはやはりレコードをまっさらな状態から削っているのが皆さん衝撃なんじゃないですかね。見たことがある人、ほとんどいないんじゃないですか?

 

maru ツルツルなレコード盤、これなんですけど、フィルムをはがして光でで熱を加えて、温度測って、彫りやすいところで(40度くらいで)オッケースタートって感じで。

機械的にはモノラルなんで、さっき森さんはレコードの方が音が良いって言ってましたけど、これは周波数が下がるので音が良いとは言えないですけど、ダイレクトに削るっていう体験っていうものを味わってもらえたらなと思ってやり始めました。

レコードカッティングは全然やろうとは思ってなかったんですけども、森さんのところで「gray city」を買った人は知っているかもしれないですが、ちょっと僕は一時期路頭に迷ってしまって、自分で何か残せることをしたいなと思ってしばらく考えていたら、その時にこのカセットテープを出していたこともあって、残しておいてよかったなと思うことがありましった。物質的に声とかを削ったことで音が出るレコードってなんかすごいなと思って。音が物理的になるっていうか。自分はレコードコレクターとかではなかったんですけど、音声を物質にしたいなと思って。

 

雄大 僕も実際彫ってもらって、音って振動なんだよなあって改めて目の当たりにすしました。以前”studio”でベーシストの千葉広樹さんのライブをやった時も印象的で、低音だとわかりやすくてズンと腹に来るんですよ。それはもちろん低音だけじゃなく音って振動であって、それを形にしているのがレコードってことになるのかな。

 

maru 低音域っていうのは、これ顕微鏡で見るとわかるんですが、溝が広くて、逆に高音は細くて、なのでダイレクトカッティングマシンていうのは、EQいじらないんですけど、本来は低音は溝が太いんで、再生しているときに針飛びとかの原因になるので実際はRIAAって低音下げて高音上げてカッティングしてます。再生するときは、逆RIAAって言って、、、はい。

 

 レコードカッティング技師っていますもんね、専門職ですよね。

 

maru この機械で音源もカットできるんですけど、一番フィットするのは音声、声とかが一番。声ってマイク目の前にしたらモノラルなんで機械もモノラルだし。

 

雄大 音源より声のほうが音が良いですよね。何か例ありますか?

(maru レコードを再生)

 

maru これ、電話をしながら直接カットしたレコードなんですけど。インスタグラム用に1分で岩手のBIG-RE-MANっていうヒップホップグループのラッパーの人と電話して録ってたら1分すぎてちゃってたっていう、笑 それをそのままレコードにしました。

こうやって直接電話しながらカットしたりとか。この人も言ってる通り、物っぽいというかそういう感じがあります。

 

雄大 僕は、maruちゃんに彫ってもらった時も、今回CD作った時も「この気持ちは何だろう」というのがあって。ビデオ撮ったり写真撮ったりは携帯で普段やってるわけだから、実物になるかどうかというのが無意識に自分の中で大きく作用しているのかなと思ったりするんですけど。maruちゃんはこれから音楽というよりかは言葉・声にフォーカスした活動になっていくんですかね?

 

maru まあそれを中心にしてやっていこうかとは思ってますね。音源用だともう少し技術が必要だし、今ドイツの友人とやりとりして準備はしているんですけど。それが準備できたら絶対雄大さんの音源をレコードにするぜ!それまでやめないぜ!っていう感じで、笑。音源と声と両方やって、イベントとかではこういうの手法を使いながら。

 

雄大 話戻るんですけど、maruちゃんのこの活動を始めたきっかけっていうのが、実際自分の音楽をカセットテープ・かたちにしてそれを振り返った時に、「録音すること」をやっていこうということで。僕はまだ自分の物ができたばかりなので、これからそういうことを感じるのかなと思います、録っててよかったなあと。それを実践している先輩がいることに心強さを感じたりしました。

 

maru 本当に何が起こるかわからないんで、皆さん何かしら自然と形に残していると思うんですよ。だから別にレコードじゃなくても、残すってことは大事なことであるし、あとで例えば自分が上の方に行っちゃったときに、ものが残ってて針を落としたら、その人の声が聞こえる・甦るっていうかね、そういうのは物理的だとあると思うんで。

 

 のら珈琲でイベントやったときは、お客さんが亡くなったお母さんの声とかが入ったスマホのデータを持ってきて、maruさんがそれをレコードにカッティングするっていうようなちょっと感動的な場面もありましたね。

 

雄大 なるほど、それは良いですね。でもだいたい何かを録音するその時点では意義って見出しにくいんですよね、実物にするか否かって。それこそ後々わかるものだと言うしかないので、これは積極的に意識してやっていくのが良いのだろうとも、僕は今回CDを作ったことで感じたことでもあります。では、maruちゃんのおすすめのレコードは?

 

(nujabes「metaphorical music」)

 

maru これはnujabesってミュージシャンのレコードなんですけども。僕がとても影響受けた人で、実際やりとりとかもあったんですけど、10年前に事故で亡くなってしまったんです。雄大さんはリアルタイムで聴いてなかったんですけど、この人のオマージュした作品に参加することになった時に、僕が尊敬していた人のリバイバルした作品に参加したということがめちゃくちゃ嬉しくて。「at “studio”」に入っているharuka nakamuraさんもnujabesさんとずっと一緒に仕事していたって人で、不思議な繋がりがあって。雄大さんがアルバム出すってなったときに「男あげたな!」って、特別な思いが僕の中であるので。

(鈴木雄大参加、Gigi Masin「Kite 」)

 

 雄大さんとやってる人めちゃくちゃすごいですよね。秋田にこんな人がいるっていうのはすごく誇らしいことだと思いますね。

 

雄大 本当に僕のまわりの人は、ミュージシャンに限らずなんですけど、みんなすごいんですよね。恵まれてるなあって思います。

Nujabesさんを僕は当時聴いてなかったんですけど、harukaさんとかmaruちゃんとかが、その音楽を継いで、継いでって言葉を使いますけど、僕もgigimasinさんの作品に参加することになって、すごい縁を感じる部分もあって。もちろんそれはこうやって形に残っていることで感じられるということもあるかなとは思います。

 

maru nujabesさんは亡くなっているけど、今でも愛されているし、そういう上で「残す」っていうのは大事かなあって。

 

 僕なんかnujabesを好きになってmaruさんを知りましたからね。だからね、物あっての出会いというか。その時は秋田に住むなんて思ってもいなかってですけど、住むことになってこうやって一緒に話す機会ができたっていうのも、その時タワーレコードにmaruさんのCDが無かったら難しかったですよね。配信だったら絶対無かったと思う。

 

雄大 「繋がり」っていう部分もあるし、例えばカセットの実際に「持つ」っていうことが、実物にすることの側面ということですね。今息子の写真をめちゃくちゃ撮ってるんですけど、データなんですよね、これは現像しなきゃいけないのかなあって数日前に妻と話していたんです。ちょうどおじいちゃんの遺品整理しててもアルバムとか出てきたりして。今時間がとてもあるので、せっかくだから記録したり保存したり作ったりしたいと思います。

録音する・物に残すって多分ミュージシャンだとわりと身近なんですけど、一般的にはなかなかまだ経験しにくいかなと思う反面、誰もが物に残すという時代がこれから来るのかなとちょっと大げさだけど思ってて、今日はワークショップで皆さんと録音してみましょうということにしました。お2人何か言い残したことは?

 

maru まあ、あの、雄大さん、おめでとう、笑

 

雄大 ありがとうございます、笑

 

maru でもやっぱり色んな人に聴いてもらった方が、雄大さんに影響受けて「俺もやろう」って思う人も出てくるかもしんないんで、僕は色んな人に聴いてもらいたいなと思っています。

 

 「物に残してくれてありがとう」って感覚は誰しもが持ってて、物は対価っていうかお金が発生するんです、ちゃんと。サブスクみたいに定額いくらでアーティストにいくら入ってくるのか不明っていうのは、僕がバンドやったときの音源を友達の店がずっと流してくれているって言ってても僕に一銭も入ってこないんですよ。どうなってるんだと、笑。物にすれば対面してお金をもらってそれでまた良い曲作れるってそれは当たり前のことなんですよね。それが日本はまだ残っているのは素晴らしい文化だと思ってて、配信も悪くはないけどこうやって人が少ない所でアーティストが生き残っていくのってちゃんとした対価を得ないと難しいと思うので、CD出した時にこうして皆が集まって買ってくれるのって最高に嬉しいと思うんですよね。

 

雄大 実際今日も手渡した時におめでとうとか言っていただいたりすると、はあああぁああ。(歓喜)

―自分の言葉を記録するワークショップ

 

雄大 では、記録するっていうことを皆で体験したいなってことでひとつ考えてみました。

レコードとカセットとCD、というよりデータってことになっちゃうんですけど、この3つでいっせいに皆さんの声を録音してみようと思います。

自分の中にあるものを言葉にすると自分に返ってくるかなと思って、、、。あれ、意味わかりますか?

 

 難しいですね、笑。

 

雄大 笑。録音するってアウトプットだと思ってたんだけど、実際してみたら、反芻するように自分に返ってくるものが多くてインプットだなと感じたんですね。

それがすごく新鮮だったし心地よさもあり、恥ずかしさも気持ち悪さもあり、この感覚ってしばらく感じてなかったなあって。皆でやってみるといいのかなと。

皆さん自分の中にあるものを出して、それを残してみるというのをやってみようと思います。僕は今回このCDで、川反中央ビル・”studio”の雰囲気を残したいなと思って記録しました。

なので、皆さんは自分の記録したいもの・残したいものを単語でいいです、一言ずつ言葉にしてもらおうかなと思います。

何か実物をとっておきたいな、あるいは、自分の中のこの感覚をとっておきたいな、というワードをお願いします。意味が無くてもいいです、とりあえず自分の中の言葉を言ってもらって記録してみようかと思います。じゃあ一発どりで、僕が指揮していきますね。では、お願いします!

(みんなで録音ワークショップ)

雄大 はい、ありがとうございます!音楽でしたね。最後にそれぞれの媒体で順々に再生してみましょう!

(録音を聴いている様子/データ→カセット→レコードの順でダイジェスト)

 

雄大 今日はありがとうございました!

◎この録音のレコードは”studio”、カセットはのら珈琲にそれぞれ置いてあります。機会がありましたら是非お手に取ってみてください。