はなうたレビュー17:木村充揮 ひとり旅 夏ツアー 2014

この記事は木村充揮 ひとり旅 夏ツアー 2014のレビューです。

金勇

僕は憂歌団を知らなかった。けどテレビで初めて木村さんの「天使のダミ声」を聞いたとき衝撃が走って、Youtubeで彼を追っかけ回して、彼の歌声に何度となく救われて泣いていた。いつか生で観てみたいと思っていたら、能代でライブというから、一人興奮して臨んだ。

会場は国指定有形文化財である旧料亭・金勇。大広間にテーブルとイスが向かい合わせで配置され、飲食も楽しめるようになっていた。お客さんは大半が還暦一歩手前くらいの中高年。筋金入りのファンたちの中、木村充揮歴が浅い僕は少々肩身が狭かったが、一曲目のGeorgia On My Mindで完全にロックされた。金勇が彼の世界に一瞬で変わってしまったのだ。それからというもの、彼の唄、それに体を揺らす人、指パッチンでリズムを取る人、鼻をすする音、、、それら全部含めたこの空間を独り占めしているような多幸感に包まれてしまった。中高年の心にぐっとくるブルースの旋律と詞。お客さん達はきっとこの唄に励まされながら生きてきたのだろう。そしてその時代を今また思い返して生き生きとしている。なんて美しいんだろうと思った。彼の唄からは、出来損ないでもいいじゃないか、人と比べるなよ、ありのままでいこうや、的なメッセージを(勝手に)感じてしまって、泣き笑いしてしまうのだ。唄にはその人の人柄や人生が本当によく表れるものだ。

曲間の木村さんの中高年らしいジョークとお客さんの中高年らしい反応も愛らしく、彼のライブの楽しみ方を教わったように思えた。また、金勇のライブ会場、イベント会場としての可能性はまだまだあるな、とも思った。

一番歌ってほしかった「君といつまでも」は今回歌ってくれなかったけど、今度それを目の前で聴くことがあったら、その時は傍らに愛する人がいて、その手を握りながら、などと妄想してみたり。

 

この記事を書いたひと

英心

僧侶ミュージシャン。ラテンバンド・コロリダスのパーカッション担当。そのほか秋田県内ではDJや自身のバンド、英心 & the Meditationaliesを立上げ活動中。