はなうたレビュー16:New York Standards Quartet Japan Tour2014

この記事はNew York Standards Quartet Japan Tour2014のレビューです。

NYSQ

 

海外からのアーティスト。 かつては沢山来訪していたと耳にするが 今は通過してしまう仙台。
楽都仙台、音楽の街、なんてよく言うけれど JSF(定禅寺ジャズフェスティバル)という大きなイベントが大成功し 音楽が街に溢れ、素晴らしいイベントとして育った反面、 市民は、音楽は野外で無料で聞けるものだと思ってしまったのではないかと危惧したりもする。
CDで聴ける手軽さもyoutubeで検索できる気軽さも、生の演奏をわざわざ聞きにいく事の大事さを損なわせている気もする。 かく言う私だって 手軽さ、気軽さのお世話になっていることはとても多い。

けれど 「圧倒的な音の渦に巻き込まれるような感激はその空間に行ったものにしか、わかり得ない」 と言い切れるほどの経験をさせてくれた NYSQのワークショップとライブだった!

盛岡、秋田、美郷町とまわり、NYSQ東北ツアーの最終日。
日本語が堪能なTSのティムは 他のメンバーのカタコトの日本語を(それでも喋ろうとしてくれる誠意がうれしい!)詳細に汲み取り、私たちに伝えてくれた。
ジャズとは言葉だ。会話だ。相手の話を聞き 時には、頷き、ときには反論もし その中で心地よくおしゃべりしたり 時には自分も知り得なかった自分の可能性や考え、言葉に驚き、それを共有、変化させていく。 ということを 楽器というツールを使って楽しんでいる。
これがジャズ と話していたように思った。
実際にバンドの中で演奏、セッションする形でワークショップは始まった。
技術にたけた若いアーティストは 自分のこれから演奏するプレイを企て さあ、これを吹いて皆を驚かせよう! とばかりに中央にすすんだ。 それも1つのスタイル。 だけどティムや他のメンバーは言う。
ジャズはコミニケーションだ。 何も考えずに真っさらな状態で向かい とにかく、周りの音楽を聴く。 聴くことで新たなインスピレーションが湧いて、それをモチーフにアドリブが展開して行くのだから、何かを作り込んで よし、やってやるぞ! と演奏することよりも、大事なことは もっと聴くことから生まれてくる。
もうすぐ結成10年目を迎える彼らが大事にしてきたことは swingすること 聴きあうこと 時にメンバーを驚かせるようなハプニングを起こしてドキドキワクワクさせること こんなことを大事にしているようだった。
これって人間関係そのもの。 会話そのものじゃないか! いつも一緒にいるメンバーこそを ワクワクさせなくて、どうする! いつも一緒にいるメンバーの言葉こそ じっくり聞かずにいてどうする。と。
なるほど。。。と唸ってしまった。
さらに面白かったのは アドリブがまだ上手くできないと ライブ、セッションデビューしていない受講生を集めてブルースを演奏した。 ティムが吹いた短いフレーズを真似する いたって簡単な内容。 だからこそ そのフレーズの吹き方、フレーズ自体がswingyだから 真似をする自分を’初心者’と思っている参加者の吹く内容のswingしてっるたら!!! 学ぶことは真似ること。 よく聞く話だけれど 技術に溺れたplayをしがちな我々よりも よっぽどswingした演奏に聴こえて こちらが恥ずかしいほどだった。

音楽は言葉だ。 一人では成り立たないし マンネリもつまらない。 生きることとジャズは、背中あわせだなと 思った充実感に、みなが高揚した1日だった。

この記事を書いたひと

名雪祥代

仙台を中心に活動するSaxPlayer。東北各地でライブ演奏する傍ら、音楽教室で音楽の楽しさを伝える仕事も大事にしている。