ーー”秋田県内在住の方のおうちで眠っているピアノをお譲りいただけませんか?素晴らしいアーティストが集う自由な表現の場でもある川反中央ビルで、もう一度美しい音色を響かせましょう。希望は少し小さめの猫脚ピアノ。ございましたらどうかご連絡くださいませ。”ーー
ピアノを譲っていただきたいとの呼びかけから、陶芸家さん舞踏家さんキュレーターさんなど心ある方々からのお申し出があったり、そこから繋がりができたり様々な物語がありました。
その中で呼びかけに一番早く反応してくださった方のピアノを無事搬入いたしました。
川を越えた山の中の広いおうちの1室にあったそのピアノは思っていたよりも古くって鍵盤も黄ばんでいて、でも音を出してみるとなんだか温かみのある音で、ちょっとびっくりしました。
中をあけてみると昭和38年納入との文字。裏の山の人が土地を売って引っ越す際に譲り受けたピアノらしいです。
製造元の東洋ピアノさんに急いで電話して、型番と納入年を伝えたところ、技術の方が大変興奮しながら「その時代の楽器は間違いなく素晴らしいものです。職人がひとつひとつ手作りで作っていて木もいいものを使っていて、鍵盤も象牙で、並々ならぬ気合の入っている楽器です。わたしも一度その年代のピアノを調律しにいったのですが、その仕事の美しさや、音の深みにとても感動したんです」とおっしゃっていました。
ここまで言われてしまったら、そして出会ってしまったら、なんとかこのピアノを蘇らせたいと。
様々な方の想いとお力添えでこういう流れとなりとても嬉しく思います。
250キロものピアノを2人で3階まで運ぶ様はまるで男のお産の様に壮絶でした。