この記事はトウヤマタケオ アルバム「飛ばない日」リリース記念北東北ツアー「ピアノと歌う日」のレビューです。
トウヤマさんのピアノが奏でる世界はちょっと不穏な安らぎを呈していて、ちょっとフラット気味の歌声が絶妙に混ざり合って、何かに憑りつかれたのように何度も何度も聴いてしまうのです。
午前中の演奏会ということでなんだかいつもと違う心持ちでまど枠さんへ。会場はお向かいのスペース。そこに最近お目見えしたというピアノがなんの違和感もなく鎮座し、弾いてくれる主を静かに待っているようでもありました。
そこに愛らしい靴下と靴を履いたトウヤマさん登場。1曲目はカリカロ。ピアノの温かくて深い音にはっとし、美しいイントロにそっと乗せられた歌声にはじめっから心を鷲掴みにされてしまいました。
でも普段聴きすぎているせいか、録音と全く別物の曲のように感じたのです。生であるだけで感じ方がこうも違うのかと思っていたら、この曲は録音と演奏会で歌うのと曲の調を変えているとのこと。調が変わるだけでこんなにも曲の持つ雰囲気が変わるのかと驚き、トウヤマさんの創る曲の繊細さを再確認しました。
演奏会は弾き語りやブルージーで思わずイエイと声を発してしまうような曲、ミニミニトウヤマ楽団と称してトイピアノとフルートが飛び入りしたり、本当に多彩な音の数々でした。
そしてアンコールは最初と同じカリカロ。でも今度は録音と同じ調での演奏。わたしの中で大切な大切な曲にそして大切な呪文になりました。
演奏会終了後に、演奏にじっと耳を傾けていた女の子たちがピアノの前に集まり鍵盤をそっと触り音をだし、何かを奏でようとしている姿が印象的でした。みんなが終わってからもその音を掴んでいようとする空間の余韻がとても幸せでした。