この記事は青木隼人ギター演奏会 朝のレビューです。
細い雨がやんで僅かな日が差すような曖昧な日曜の朝
大きくむすばれたカマンベールチーズ入りのおにぎりと温かいお茶とともに音楽が始まりました。
青木隼人さんはちょうど愛読している雑誌の中で「雨と休日」というレコード店のマスターが「窓を開けて風を感じながら聴きたい」というテーマで紹介されていました。今の季節の時間軸にぴたりと寄り添うイメージで。
大町のまど枠さんのお向かいのstudioという小さいけれど独特の意思のようなものを持った場所で、展示中の藤川孝之さんが左側で黙々とデッサンし、右側で青木さんがスタンバイ。背景のすりガラスから覗く淡い緑。
そしてぽろんぽろんと爪弾くチューニングの音からもうすでに音楽が始まっていました。青木さんのギターの音色とお茶を注ぐ音、藤川さんの筆を走らせる音や鉛筆のぶつかり合う音、だんだんと音と空気の境目がなくなってゆくから、呼吸をするとおにぎりで満たされたおなかの中にゆっくりと浸透していく感じ。周りの人もみんな文字通り同じ釜の飯を喰っていたので同じように浸透しているのかなと不思議な共生感を感じました。
普段感じる時間の流れとちょっと違う時間の流れが音楽の中にはあると青木さんが仰いました。今日は青木さん自身がこの音楽の時間の方向にいってしまったので突然のすりガラスから差し込んだあかりにびっくりしたところで音楽が終わりました。終わり方まで恐ろしいほど美しい。
青木さんの音楽のイメージを具現化し全てが一つに繋がる空間を創ったまど枠伊藤さんの緻密な配慮は本当に見事なものでした。ここで起きる出来事はいつも魅力的である所以が垣間見えた気がします。
演奏会が終わり外へ出るとなかいちの大きなスクリーンではサッカーの試合が映し出されていて普段の時間が流れていました。これからまた一日が始まるのだと気づき、とても贅沢をした気持ちになりました。