この記事は高瀬アキ・一時帰国スペシャルライブのレビューです。
去る11月16日、秋田市土崎のドリームタイムにピアニスト高瀬アキが降臨した。人々の表現を借用すれば筆者にとって「高瀬アキは神である」。
神のパフォーマンスのレビューなど畏れ多くて書けるはずもないが、いきがかり上、あの筆舌に尽くせない素晴らしいコンサートの模様を報告する次第である。
今年はあのエリックドルフィーが亡くなって50年。今回の高瀬アキ一時帰国スペシャルライブはその50回忌追善供養。従えたメンバーはそのコンセプトにあまりにもふさわしい、というよりこの人しかいない、ドルフィーの衣鉢を継ぐアルトサックス林栄一、ファーストアルバムから常に寄り添ってきたベース井野信義、井野の推挙により抜擢されたという、飛ぶ鳥を落とす勢いの若手ドラマー田中徳崇。
メンバー紹介だけでクラクラしそうになるが、当日はそのドルフィーの手による曲とメンバーの幾つかのオリジナルが演奏された。
ジャズのスタイルの歴史のなかでフリージャズという括りがあり、高瀬アキは通常その括りで論じられることが多いが、もはやそういうカテゴライズは不要であると考えている。
高瀬アキのジャズは「高瀬アキ」というスタイルの音楽である。
肘打ち、平手打ちを交えたパーカッシブな演奏かと思えば、林の熱狂的なアルトソロを引き取った興奮を沈めるかのごとくスタテックで美しいメロディーを紡ぎ出してくる。井野が年期の入った前衛派で、過激なアルコソロは知る人ぞ知る。若手の田中はその中で変幻自在。
1987年ベルリンに渡ってから、あの「グローブユニティ」のアレクサンダー・フォン・シュリペンバッハ氏とともに創った高瀬アキの音楽は、もはや言語を拒絶。
筆者は恥も外聞もなく高瀬の真ん前に陣取り2時間に渡り音の集中豪雨を浴びてきたが、わずかな時間でも一緒の場所にいられたことはあの世まで持って行きたい歓びである。